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技術や営業など「本業」が優先される結果、日系企業の「人事部」は機能不全の状態だ。仕方がないかもしれないけれど、それでいいのか? 採用、評価、給与、リテンション、組織作りまで、人事は全ての事業の根幹だ。今一度、人事の仕事を真剣に考えるため、現状の課題と解決策を各業界のプロに尋ねた。

 
 

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ソフトスキルを主体とした研修サービスで定評があるKOSAIDO HR VIETNAM。離職率の高いベトナムでは「定着」(リテンション)も大きな課題だが、「ユニークな福利厚生」などが退職抑止に有効という。

 

心をくすぐる多彩な手法

人事部の大きな役割は「採用」と「教育」だが、現在では「定着」が重視されているという。これは日本でも同様だが、ベトナムでは特に重要な課題。

定着の手法は主に2つあり、最も有効なのは「給与のアップ」。だが、給与制度やスタッフ間のバランスもあってこれには限界がある。もうひとつがユニークな福利厚生とのことだ。

「ベトナム人の好む社員旅行、テト前のお菓子セットのギフト、結婚記念日など記念日を有休にするなどありますが、独自性が大切。なぜなら、福利厚生は自由にデザインできるからです」

同社の例では、テト前に渡す菓子セットに、本人の写真入りのオリジナルメッセージカードを添えた。カードには一人一人に会社から、「あなたはいつも明るくて会社の雰囲気が良くなっているよ。ありがとう」などと、当人の優れた点と、感謝の言葉を書いた。

評価されていると感じて本人は喜び、それを家族に見せれば家族も喜ぶ。ベトナム人が会社を辞めたいと思うと、まず家族に相談する傾向にあるようなので、自分の家族が会社からいかに大切にされているかを知ってもらうことは、「引止め効果」につながる。

また、日系の生命保険会社と契約して、コア人材には積立て型の生命保険を会社負担で掛けている。5年後、10年後に一時金が出るようなシステムで、長く務めるほど高額になる。掛け金により差はあるが、一時金はベトナムの金銭価値からすればとても大きな金額で、会社に長く勤めるモチベーションになる。

福利厚生コストは採用コストの裏返し

「教育研修も福利厚生の一環と考えましょう。ベトナム人は勉強好きですから、その機会を与えていると社内外にアピールすることで定着化を図れます。費用は掛かりますが、採用コストと考えたらどうでしょう」

例えば5人が退職し、5人分を採用するコストが100万円とすれば、その金額の中で福利厚生を考える。もちろん、新規で5人を採用しても戦力になるまでに時間が掛かる。

日頃のコミュニケーションも大切で、質はともかく、「量」を確保すべきだという。

頻繁には面談できないので、毎日軽く声を掛ける。いつも黙っていて何を考えているかわからず、たまに怒るだけの上司では良い印象は持たれない。仮に怒られても、コミュニケーションによる下地ができていれば納得もしてくれるケースが多い。

「私の場合は家族などプライベートな話が多いですね。『お父さんは元気か?』などです。辞めると言ってきた人の引き止めはまず無理。気持ちが決まっているか、転職先が決まっている場合が多いからです。従って、普段からのコミュニケーションが非常に重要と言えます」