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技術や営業など「本業」が優先される結果、日系企業の「人事部」は機能不全の状態だ。仕方がないかもしれないけれど、それでいいのか? 採用、評価、給与、リテンション、組織作りまで、人事は全ての事業の根幹だ。今一度、人事の仕事を真剣に考えるため、現状の課題と解決策を各業界のプロに尋ねた。

 
 

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ベトナム人の教育・研修を中心に、日本への送り出しや人材紹介を行うESUHAI。同社運営のカイゼン吉田スクールで約5000人の卒業生を輩出した経験から、ベトナム人教育の「仕掛け」を語る。

 

家族と仕事をリンク

カイゼン吉田スクールは技能実習生や幹部候補となる技術者が中心に学ぶ学校で、日本企業への送り出しも担う。開校して10年、昨年は約1000人が卒業し、今年は約1300人を見込む。就学期間は1年間で、生徒は20代前半の若者がほとんどだ。

「ベトナムではキャリア教育がなされておらず、大学には日本のような就職課もない。若い人は、転職を繰り返しながら実地でキャリアを学んでいくので、定着するのは26歳以降が多いです。弊社ではこのキャリア教育もしています」(里村氏)

社員の教育や研修をどうしたらよいかわからないと悩む日系企業は多いが、そのベースは「目指すものを会社と従業員が共有すること」という。キーワードは「家族」。ベトナム人は一人前の大人を「社会人」ではなく、「家族人」と考えていると里村氏。つまり、扶養などで家族の面倒を見られる人だ。

一方でベトナム人は会社と家族を分けて考えがちで、かつ3年後、5年後といった将来像を描くのが苦手。ならば、3年後や5年後は自分の家族をどうしたいか、そのためにはどんな仕事やポジションが必要かを考えてもらう。

「社長が父親、部長が長兄、課長が次兄などと思ってもらえればベスト。ここまでアプローチできればよい教育ができます」(里村氏)

納得できる説明とメリット

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授業では「ビジネスのマナー・マインド」もあり、挨拶、身だしなみ、時間厳守などと共に「言い訳禁止」が含まれている。ベトナム人は仕事で言い訳をしがちだが、家族に怒られても言い訳はしないという。それは、家族が自分のために言っていると理解しているからとMr. Nhatは説明する。

「会社はお金を稼ぐための場所と思うから言い訳をする。会社は第2の家族であり、特に『日本の企業は現在でなく、これから伸びる人を優秀な人とみなす』ことを伝えると、言い訳をしなくなります」

ベトナムにはまだ少ないからと、同社では日本のような厳しいルールやマナーを教えている。ただ、ベトナム人は軍隊式教育を嫌うので、「その結果どうなるか」をきちんと説明している。例えば、元気な挨拶は相手を気持ちよくするので、あなたへの印象がアップして良好な関係となり、仕事がスムーズに進み、ネットワークも広がるなどだ。ルール化することで、それに従った皆が動き出し、会社の将来、すなわちあなたの将来が広がっていく。

「ベトナム人は目的や意図がわからないとルールを守りません。しかし、納得のいく説明をされて、それが自分にとってのメリットだと感じれば、きちんとルールを守るのです」(Mr. Nhat)。