日本の自治体、 ベトナムを駆ける!
日本各地の自治体がベトナムに乗り込んでいる。特産品の輸出、工業団地への援助、販路の開拓、現地企業との連携…。従来と異なるのは、進出企業を「戦略的」に支援している点だ。共通していたのは「人とのつながり」の大切さだった。
輸出直後から拡大傾向に
魚価が低迷する一方で、国内消費の拡大が望めない日本市場。そこで根室市は市長が会長となり、根室市、根室商工会議所、水産協会、市内4漁業協同組合、金融協会から構成される官民一体の地域プロジェクト「根室市アジア圏輸出促進協議会」を2010年5月に立ち上げた。
仕掛け人はベトナムに幅広い人脈を持つ元商社マン。協議会設立前の4月に来日したベトナム計画投資大臣に経済交流を要請し、2010年10月にはベトナム南北の商社バイヤーを根室市に招いて、冷凍サンマ等のテスト輸出を合意。2011年4月には水産会社11社が合計6.7トンの冷凍サンマをホーチミン市に輸出した。その後の6月に採用されたのが日本企業での勤務経験のある、レ・ティ・トゥ・チャンさんだ。市内の中小企業とベトナム企業とのマッチングや、水産物輸出の手続き支援などを担当する。
「この年の秋口から、ホーチミン市とハノイの企業への輸出が拡大しました。また、ベトナムでのサンマの普及に併せて、他の商品の引き合いも増え、いくら、サケ、マダラなどの加工食品の出荷も始まりました」
2012年からは「根室サンマ祭り」を開き、ハノイとホーチミン市内のレストランやスーパーでの試食会や即売会を実施。4回目となる今年1月には、ホーチミン市内の日本料理店でサンマ料理を特別価格で提供した。2010年度に6.7tだった冷凍サンマの輸出量は、2013年度には665tと約100倍になった。
競合現る、ブランド化へ
最近ではサンマの加工食品も輸出。加工品は関税などもあって価格が日本の2~3倍するが、売れ行きが良く、数量では冷凍魚のほうが多いが、輸出金額は加工品のほうが大きいという。
「冷凍サンマはスーパーで『日本製』と表示しても、信用しない人がいます。加工品はそれが間違いないので買ってくれるようです」
ただ、明るい話題ばかりではない。2015年秋には不漁で漁獲量が平均の50~60%。結果として価格は上がるが、近年では台湾産や韓国産の安いサンマの輸入が増加しており、販路を中間層や富裕層に絞りつつあるという。
「今後は『少し高いけどおいしい』という根室のブランドで富裕層に売っていきたいです。販路も全国に広げたいですし、水産加工品にも力を入れます。ベトナム人の嗜好に合わせた商品開発を考える会社もあり、海外でのヒット商品を作りたいと意気込んでいます」
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