Nam Long Investment Corporation
不動産のローカルマーケット 変化するベトナム人の住宅

市場のニーズを基に、開発する不動産商品の構成を転換し、安定的な発展戦略を進めたナムロン。都市開発のプロジェクトとともに、今のトレンドである手頃な価格のコンドミニアムのプロダクトラインを開拓した。一般的なベトナム人の住宅事情から今の不動産市場を見てみよう。

投資用でなく住居用 手頃価格の新路線

Sales & Managing Director
Mr. Le Chien Thang

不動産バブルの時、ナムロンでも他社のように、ヴィラ1軒で60万~100万USDという高級な物件を販売していた。ただ、同時に不動産市場の過熱ぶりを疑問視しており、2006年から市場分析を始めたという。
「すると、戦争が終わった1975年を境に出産率が上昇し、人口構成で25~40歳が多く占めているとわかりました。つまり、これから結婚したり、結婚して子供が1~2人いて、初めての住宅を求めるような人たちです」

同社では、安定的な発展のためにはマスの需要に応えていく必要があり、こうした世代のニーズは今後10~15年は続くと判断。その結果として開発を始めたのが「EHome」シリーズであり、「EHome 1」を2007年に販売した。

これは投資や投機ではなく居住用のコンドミニアムで、価格を抑えるために要素を絞って建築。平均的な面積は40~60㎡で、リビングとキッチンにベッドルームが1~2部屋。部屋は基本的に2タイプのみにしたという。
EHomeのプロダクトラインの特徴はEconomy、Ecology、Efficiencyの3つの「E」。効果的なデザインや品質を落とさない安価な素材。シリーズ平均で2200戸となるので、大量生産でのコスト削減や、建設会社との値段交渉ができた。棟自体を自然に風や光が入るように設計して、エアコンや照明機器の消費量も少なくしたという。

「EHomeは1~4まで完成して、1~2は完売。2012年に着工した2200戸ある3は、半分以上売却済みです。購入者は会社員が多く、その70~80%は平均で15年のローンを組んでいます」

購入者ニーズを先読み 今後は建売住宅も

ホーチミン市ビンタン区の「EHome 3」

バブルの渦中で事業転換をした経験から、今はバブルの再来かどうかを尋ねると、「当時はいくつかの要因が重なっていた」と振り返る。まず、株式市場が活況で、儲けを出した人が多くいたこと。そして、その金の投資先を考えた時に、銀行預金の利率や他の候補もあまり魅力的ではなかった。一方、不動産に関する情報は少なく、住宅の供給量は少なかった。そのため、不動産に投資が集中し、価格が上昇したのではないかという。
「現在は居住用に住宅を買う人が多く、手頃な物件の販売率も上がっています。住宅の供給量は十分ですし、株式市場で投資の原資を儲けるのは難しい状況です。今後不動産の価格は上がっても、バブル期ほどではないしょう。ただ、株式市場が高騰したらわかりませんが(笑)」

同社が近年進めているのは、EHomeの1ランク上のプロジェクト「FLORA」だ。「EHome 5」が実質的な「FLORA 1」となり、「THE BRIDGEVIEW」と名付けた。ベトナムの経済成長と中間層の拡大から、住宅のアップグレードを望む人が増えてきたという分析による。

FLORAはEHomeと異なり、同社が既に開発した都市開発地域の、空いた土地にコンドミニアムや公園などを建設する。つまり、都市開発での充実した設備が利用できると同時に、交通アクセスのよい立地ともなっている。FLORA 2の「FLORA ANH DAO」は、阪急不動産と西日本鉄道との3社で開発を進めている。

「EHomeとFLORAに加えて、今後は土地所有権付きの一戸建て住宅を販売予定で、現在ビンズン省で開発中、2ヵ月後はフーミーフンに隣接するビンチャイン郡で開発を始める予定です。平均70~75㎡の土地に建築面積は90㎡程度、2~3階建ての住宅を多数建築します。4ベッドルームで6万5000~10万USD程度です」

これはまさに日本の建売住宅。集合住宅だと隣人との悩みも出るため、家族だけで暮らせる一軒家を持ちたい人がターゲット層だという。ベトナムは経済だけでなく、住宅事情や住宅意識も先進国に近づいているようだ。

ベトナムの住宅用プロジェクト例

THE BRIDGEVIEW
EHomeシリーズのアップグレード版が「THE BRIDGEVIEW」だ。2棟のコンドミニアム内に全592戸があり、レストラン、プール、児童用の遊び場などが揃う。大きなメリットは、ナムロンが既に開発した敷地面積約28haの「ナムロン・タントゥアンドン住宅地域」内にあることで、同地域内の学校、幼稚園、エンターテイメントクラブ、商業センター、レストラン、ホテルなどの施設が利用できる。

EHomeとの設備の違いは木材のフローリング、大きめの窓ガラス、ビデオフォン、電磁式IHコンロなどで、セキュリティチームをブロック別に配している。完成後の運営会社はナムロンと日本のオカムラホームとの合弁会社、オカムラトーキョーが行う予定。

価格はEHomeが約500~750USD/㎡なのに対して、約950~1200USD/㎡。手頃な価格が前提なので、1戸当たりの面積を54~67㎡としている。場所はホーチミン市7区の中心にあり、市中心部の1区から約4km、フーミーフン地区から1.5kmという好立地だ。

住所:225 Tran Trong Cung St., Tan Thuan Dong Ward, Dist.7, HCMC 敷地面積:20158m²