TMI総合法律事務所

新住宅法とその関連法令 注意すべきポイントの概要

新住宅法により、外国人(外国籍の個人)と外資系企業の住宅所有が、これまで以上に広く認められるようになった。しかし、まだ多くの制約が残っているため注意が必要だ。そのポイントを大手法律事務所の弁護士たちが語る。

外国人・外資企業に共通の規定

左から小林 亮氏、Ms. Nguyen Thi Hong Phuc、岡田英之氏、小幡葉子氏、Ms. Tran Thi Cam Giang

①取得できる住宅の形態:住宅開発プロジェクト内のアパート、または戸建てに限られます。独立した敷地に建てられた戸建ては取得できません。
②取得できる住宅数:一棟のアパートの戸数の30%まで、一町内の中の戸建て250戸までに制限されています。ただし、これが個人1人または企業1社の上限なのか、外国人・外資企業の合計なのか明確になっていません。

外国人に関する規定

①取得要件:ベトナムに入国を許可された外国人であれば、ベトナムでの住宅所有が認められます。
②存続期間:住宅所有権の存続期間は最長50年で、延長が可能です。
③取得後の利用:自己使用のほか、第三者への賃貸もできますが、事前に所轄機関に書面で通知しなければなりません。

外資企業の住宅所有

①取得要件:ベトナム投資法に基づいて設立された外資企業の他、外国企業の支店、駐在員事務所、外国投資ファンド及びベトナムで活動する外国銀行の支店に対して、住宅所有が認められています。従って、ベトナムに拠点(現法・駐在員事務所・支店)を持たない外国企業の住宅取得は認められていません。
②存続期間:住宅所有権の存続期間は、企業の存続期間と同じとされ、企業の存続期間を超えて延長することは認められていません。
③取得後の利用:自己使用目的(社宅用)に限定され、第三者への賃貸は認められていません。

不動産事業法による規制

不動産事業法により、外国人・外資企業は、不動産事業として販売用・賃貸用の不動産を第三者から購入することが認められていません。

外国人・外資企業が住宅法に基づいて住宅の売買、賃貸(個人の場合のみ)を行う場合、小規模・非反復的な取引であれば、不動産事業法上の不動産事業には該当しませんが、大規模・反復的な取引を行う場合にはこれに該当する場合があります。

その場合、たとえ不動産事業法上の要件(企業を設立し、最低資本金200億VND)を満たしていても、第三者から購入した住宅の販売・賃貸はできません。従って、住宅法に基づく外国人・外資企業の住宅の売買・賃貸は、小規模・非反復的なものに限定されます。

ガイドライン政令

本稿の執筆時点(2015年7月現在)では、まだ外国人・外資企業住宅所有に関する住宅法施行ガイドラインを定める政令は、制定されていません。この政令により、上記以外の規制が課される可能性がありますので、今後制定される政令のチェックが必要です。

土地法・不動産取引慣行

外国人・外資企業の住宅所有に関連する土地法の整備がまだ行われていないため、土地に関するどのような権利を取得できるのか明確になっていません。また、ベトナムでの不動産取引慣行上、代金決済時に引渡しのみ行われ、権利証の交付・登記手続きはそれ以降に行われる場合もあります。