変化するハノイの転職、長期ビジョンを持つ求職者たち

2014年3月から日系企業を中心にベトナム人の人材紹介をスタートさせたHRリンク。ハノイを拠点にする同社が、日本語人材を求める日系企業とベトナム人求職者の、変わりつつある今の姿を伝える。

製造業からITへ求人業界がシフト中

General Director
竹之内雅也氏

ベトナム人登録者は20代〜30代前半が大半で、男女比は男性が約3割、女性が約7割、日系企業の出身者が多いという。彼らのキャリアは経理、営業、事務、販売・接客、ホテル業務など様々であり、日本語能力はN1~N3が最も多いという。ただし、IT系に関しては日本語人材の絶対数が少なく、ひっぱりだこだそうだ。

「北部ではハノイ郊外での製造業の進出が多かったのですが、最近では市内にIT、人材、不動産、商社などを含むサービス業が急増しています。ベトナム人は自宅から勤務地までの距離を気にする方が多いので、郊外の製造業から市内のサービス業へと人材が流れつつあり、実際に市内の求人への候補者の方が多くなっています」

また、現在は「日本語能力+α」が求められていて、この点においては企業側も求職者側も同じ考えのようだ。企業側は日本語能力+業務スキル、求職者側は+αとして専門スキルを身につけたい人が多いという。例えば通訳の仕事なら、通訳兼営業、通訳兼総務などになる。

意識が変化していくベトナムのビジネス文化

ただ、日本語人材は不足しており、人材の獲得合戦が始まりつつあるようだ。
これが続けば必然的に給与が上昇するため、採用できる企業とそうでない企業の格差が生まれてしまう。そのため、ピンポイントの即戦力採用ではなく、間口をある程度広げた募集や、若い人材を積極採用して自社で育てるなど、何らかの工夫が必要になると竹之内氏は語る。

「良い人材を獲得できているのは、人材紹介会社任せにしたり、メディア戦略に注力したりではなく、自社の待遇や環境を工夫している企業です。ベトナム人は年上の部下を嫌がるといった、ベトナムならではの事情を理解することも大切でしょう。今後、日本語人材の流動化はかなり進むと思っています」

最近では、長期的なビジョンを持ったベトナム人求職者が、男女を問わず増えているという。給与や勤務地以外の条件として、「実務経験を積める」や「スキルが向上できる」が増えており、特にIT系に顕著という。ローカルのIT系企業でこんなことがあったそうだ。

「あるスタッフがスキルアップのため転職すると言ったら、上司は『そのスキルを身につけたら戻ってきてほしい。次はこれぐらいの給与でオファーするから』と告げたそうです。企業側も転職者側も長期的なビジョンでビジネスを考える文化は、これまでのベトナムにはなかったと思います」