姻時に離婚の方法まで話し合うカップルは多くないと思います。しかしベトナムにおいて、日系企業が現地企業と合弁事業を企図する場合には、トラブル時の合弁事業の解消方法をあらかじめ書面の形で合意しておくことが重要となります。文化・言語の違いから生ずるコミュニケーションの齟齬、不信感等が募り、合弁会社立ち上げ時の資産評価のみならず、その後の運営においてももめるケースが散見されるからです。

合弁事業の法的側面の防備は、かかるトラブル削減の一手段です。例えば、社員総会の決議要件。ベトナム法下では(合弁会社において多く取られる有限責任会社形態の場合)、出席者の出資総額の65%が必要です。さらに会社の再編・解体等一定の重要な決定については、75%が必要になります。日本の会社法の感覚で過半数の持分を有しているだけでは、会社の意思決定を十分にコントロールできません。

もっとも、外資比率は業種によって制限されうるため、出資比率を検討する場合には、合弁会社が営む予定の業種ごとに上限の確認が必要です。

なお、2014年11月の法改正(統一企業法及び投資法を含むもので、2015年7月施行予定)により、ベトナムにおける企業統治及び外国投資家への影響が見込まれます。例えば、社員総会の定足数は現行法下では法定資本の75%であるのに対し、改正によって65%に下げられます(上記決議要件は現状通り)。また、会社の法的代表者を複数人定めることも可能になります。

変遷する法令を考慮した上で、ビジネス上の判断をすることが重要といえるでしょう。

岸本 明美
Kishimoto Akemi
DFDLに勤務する日本国弁護士及びCFA協会認定証券アナリスト。イングランド及びウェールズ(英国)のソリシター。フランスHEC卒。エネルギー・インフラプロジェクト関連、M&A等を担当。
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