回は、ベトナムの法人所得税(以下CIT)の損金算入項目と不算入項目を解説して参ります。ベトナムのCIT法は、日本と同様、課税所得に法人所得税率を乗じてCIT税額の計算を行います。課税所得とは、益金の額から損金の額を控除したものになります。ここでは、会計上の費用の全てが、損金として控除が認められるものではありません。

損金算入が認められる費用には、原則として4つの条件があります。①生産・事業活動に直接関連して生じた費用、②法律で要求される合理的な請求書等書類を伴う費用、③付加価値税(以下VAT)を含む金額が2000万VND以上で非現金支払いを証する書類を伴う費用、④VATインボイスを伴う費用、の全てを満たさなければなりません。損金算入が認められない費用とは、この4つの条件のうち、1つ以上を満たさないものになります。

さらに、前述の4条件を全て満たしても、次の費用は全部または一部の損金算入が認められません。①CIT法の規定に基づかない固定資産の減価償却費、②行政上の罰金、③一定の目的以外に使用される寄付、④未払い費用、⑤金融機関以外からの借入金にかかる利子でベトナム国家銀行(中央銀行)が定める利率の150%を超える部分、⑥税務署へ未登録の銀行口座から送金した費用、などが限定列挙されています。

費用の損金算入が認められるか否かは、税務署がその決定権限を有しています。税務調査時に損金算入を否認された場合に備え、当該費用が損金算入項目であることを合理的に説明できる書類を備えておく必要があるでしょう。次号は、CITの優遇措置に関する解説となります。

津田 栄治
Tsuda Eiji
AGS ハノイ事務所に勤務する日本国公認会計士試験合格者。住宅メーカー・商社で海外駐在。メーカーでの経理を経て、2013 年より現職。法人設立、会計税務などを担当。
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