回はベトナムの個人所得税(以下PIT) における、非課税所得と所得控除について説明します。

非課税所得とは、社会政策その他の見地から、個人所得税を課さないとされる所得になります。主なものとして、①ベトナム着任一時金、②年1回の一時帰国費用(2回以上は加算)、③子女教育費、④グロス給与の15%を超える家賃補助、⑤残業・夜間勤務する者の賃金の割増部分、⑥出張手当、⑦一定限度までの福利厚生などがあります。適用には、労働契約書や就業規則に明示、契約書等のエビデンス確保など、各々要件がある点に留意が必要となります。

所得控除とは、納税者及びその扶養親族の世帯構成に対する配慮になります。主なものとして、①基礎控除(900万VND/月)、②扶養控除(360万VND/月:扶養者1人当たり)、③社会保険料(健康保険・厚生年金・雇用保険)などがあります。①基礎控除は、ベトナム居住者に一律適用されます。②扶養控除の対象は、18歳以下の子供、労働可能年齢(男性18~60歳、女性18~55歳)にあるがハンディキャップがあり労働できない子供や配偶者、扶養する労働可能年齢を超えた両親となります。日本の配偶者控除に当たる所得控除はありません。③社会保険料については、日本で納付する介護保険料はベトナムに制度がないため、控除できない点に留意する必要があります。

その他に、国際間二重課税の排除を目的とする外国税額控除があります。日越租税条約によれば、ベトナム居住者が日本で納税した個人所得税額のうち、一定額までベトナム側で控除が認められます。

次号からは法人所得税(CIT)の解説となります。

津田 栄治
Tsuda Eiji
AGS ハノイ事務所に勤務する日本国公認会計士試験合格者。住宅メーカー・商社で海外駐在。メーカーでの経理を経て、2013 年より現職。法人設立、会計税務などを担当。
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