回は、ベトナムにおける駐在員の人件費について解説します。駐在員にかかる経費が、親会社と現地法人によって負担される場合、負担項目や割合は出向契約において定められます。また、出向契約は親会社の海外赴任規定に従って作成されるのが一般的となります。

駐在員にかかる費用には、給与・手当、住居費、任意保険料や支度金、個人所得税、健康保険料(3ヶ月以上の労働契約を有する場合)や、社会保険料(2018年1月1日以降)などがあります。ベトナム人と異なり、外国人は労働組合費の支払い義務はありません(組合憲章のガイダンス238/HD-TLĐ)。

このような駐在員にかかる費用のうち、現地法人が負担する部分は、労働契約書や合意書、会社規則等に基づくことで、現地法人における法人税法上の損金として認められます(法人税に関する通達96/2015/TT-BTC第4条2.6 b)。そのため、出向契約においてベトナム法人の費用負担が明らかな場合でも、現地法人と個人の間で合意事項を書面に残しておくことをお勧めしています。

なお、現地法人が負担する給与を日本に送金する場合は、送金目的を給与の送金とすることに注意を要します。すなわち、コンサルティング費用といった給与以外の目的による送金は、ベトナムにおける外国契約者税の対象となって、追加の税金負担の可能性があります。

このように、駐在員の人件費は親会社と現地法人が負担することから、契約関係および税務上の取扱いに注意を要します。そのため、これを機会に海外赴任規定、出向契約、労働契約書、会社規則等の見直しをお勧めいたします。もし不明な点がある場合には、早めに専門家にお問い合わせください。

吉田 俊也
Yoshida Shunya
AGSホーチミン事務所に勤務する日本国公認会計士。日本の大手メーカーでの経理を経て2014年より現職。原価計算システム構築、連結決算、国際会計基準対応などに強みを持つ。
http://ags-vn.com