EY大手会計事務所のベトナム事情 No.024

日越租税条約における免税要件

EYベトナムの小野瀬です。第24回の対談は、日系企業担当の浅野智道マネージャーです。

小野瀬 近年ベトナムではM&Aや組織再編等が増えていますが、その際に留意すべき税務上の論点として、資本譲渡税があります。資本譲渡税は、ベトナム法人の資本を譲渡する際に課される税金です。日本の会社が譲渡する場合、一定要件を満たせば日越租税条約に基づく免税申請ができます。どのような要件か教えてください。

浅野 日越租税条約第13条2項及び3項に定められている要件を満たした場合、ベトナムに課税権があります。つまり、この要件に該当しない場合、免税申請ができます。具体的には、①保有株式の比率が25%未満または、当期中の譲渡株式数が5%未満の場合であって、かつ、②資産に占める不動産の割合が約50%未満の場合、免税申請ができます。

不動産の定義にも要注意

小野瀬 免税申請可能かどうかを検討する際には、保有株式数、譲渡株式の割合、および対象会社の不動産の割合等に注意が必要ですね。他にポイントはありますか。

浅野 不動産割合の算定時に、不動産の定義について留意が必要です。民法では、「土地、土地に取り付けられた家・建造物・他の資産および法律に定めた他の資産」と定義されています。この定義では、工場の機械設備が不動産に該当するかどうか明確ではありません。以前ベトナム・シンガポール間の租税条約に基づく申請の際に、税務総局がハノイ税務署に対して発行した公文書によると、「機械設備が長期間継続して工場に取り付けられており、生産活動を形成している場合、これらの機械設備は不動産と見做される。」という見解を示しています。

小野瀬 それは意外ですね。他国では一般的に機械設備は不動産に含まれないため、この見解が今後も適用されるか定かではないですが、資本譲渡税の免税は税務調査で指摘を受けるケースもありますので、慎重に検討する必要がありますね。

小野瀬 貴久
日本国公認会計士。大手監査法人にて監査や株式公開業務に従事後、EYジャカルタ勤務を経て2011年より現職。
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